ヒロの唇から白い息が薄く零れて、私は「ごめんね」と謝った。

突然謝罪されたヒロは当然、その双眸に私を映しながら目を瞬かせる。


「なんで謝る?」

「予定あったみたいだから」


そう話してから、先ほどの店内での会話が聞こえていたことを明かした。

病院に行く予定があるなら申し訳なかったと。

けれど、ヒロは「ああ、それか……」と呟いて。


「特に急いでるわけでもないから気にしなくていい」


ふい、と。

私を彼の視界から外し、無言になる。

どこか気まずさを漂わせたそれは、昨夜、ナギと喧嘩をしたのだと話していた雰囲気に少し似ていた。

聞いてはいけないことだったのかもしれないと、私は自分が失敗したことを悔いる。

相手がヒロだから、つい気を抜いてしまうというか。

いくら幼馴染でも、踏み込まれたくないことはあるはずだし、まして私とは引っ越しして以来会っていないのだ。

もっと距離感を大切にしないとならないのに、と。