「やるから、水分補給しとけ」
「えっ、でも」
「飲んで、その疲れた顔マシにしろ」
言われて、私はそんなにひどい顔になっているのかと、思わず頬に触れる。
すると、ヒロはフ、と鼻で笑って再度店の中へと消えた。
「あ、ありがとう」
きっとヒロに声は届いただろうけど返事はなく、私は彼の気遣いに感謝してペットボトルに視線を落とす。
なんの濁りもない透き通ったミネラルウォーター。
キャップを捻り開けて、さっそく喉を潤すと、乾ききった地面が雨に打たれるかのごとく、私の体が満たされていった。
ふと、奥のレジの方にいる女性とヒロが会話している声が聞こえる。
「いいよ、ゆっくりしてきなー」
「いや、一時間で戻るようにはする」
「今日は忙しくないし、そのまま病院行っても大丈夫よ」
……病院?
ヒロ、どこか悪くしてるんだろうか。
「……それは、午後の配達のあとにする」
やっぱり私、ヒロの予定を邪魔しているのではと申し訳ない気持ちになる。
もし昼休憩を使って病院に行く予定だったのならお昼を食べてる間に私の用件は済ませないと。
ともかく今は、ヒロを見つけられて、ナギに会いに行けそうな事に安堵して。
ペットボトルをカバンの中にしまった直後、似たようなマフラーを先に購入してから会いに行った方がいいのではと考えた。
この辺りに雑貨や衣料品を扱うお店はあるだろうか。