確かに免許を持っているなら自転車に乗るよりもバイクの方が格段に便利でいい。

坂道だって楽ちんだし。

使ってないというなら、貸してもらえると嬉しい。

ナギの家に行くのも、バスを使わない場所ならすごく助かるし。


「それじゃあ、しばらく貸してもらうね。ありがとう」


手を前で重ねてペコリとお辞儀をすると、ヒロはそんなに畏まらなくていいと微笑んだ。


「ところで、凛はこれから買い物でもするのか?」

「え?」

「お土産を見に来たなら、こっちじゃなくて港の方がいい」


勧められて、私は小さく頭を振る。


「あ、ううん。そうじゃなくて、実はヒロに聞きたいことがあって」


ここへ来た理由が自分だということに驚いたのか、彼は少しだけ目を丸くした。


「俺に?」

「と、突然訪ねてごめんね。でも、忙しそうだし、また時間を改めるよ」


仕事中にこうして話しているのも邪魔なっているのだと気づき、何時に終わるかだけ聞いてまた訪ねようと考える。

それまでは、ヒロの自転車で近場の神社を巡って自力で探してみようと頭の中でシュミレーションしていたら。


「いや、実はこいつを冷蔵庫にしまったら昼休憩だって言われてる。昼飯食いながらでいいなら聞けるが、それでもいいか?」


ヒロの申し出に私は笑みを浮かべてコクコクと頷いた。


「もちろん! ありがとう」

「わかった。少し待っててくれ。自転車も持ってくる」


そう言い残すと、ヒロは店の中に入って……また、戻ってきて。


「ほら」


私の手に、小さめのペットボトルを投げ渡した。