不幸せではないけれど……島でずっと暮らせたら。

そんな考えが過った頃、私は父と住んでいた家があったと思われる空き地に到着した。

そこは、母の言った通りで本当に何もない。

土から雑草が生えているだけで、当時の面影は一切なかった。

それでも、記憶は蘇る。

平屋造りの日本家屋。

玄関の前がガレージスペースで、父の愛車と母が使っていた原付バイクが停まっていたな、とか。

奥には狭いけど庭があって、夏は縁側でスイカを食べたな、とか。

些細なことだけど、それらの懐かしい思い出は、私の心を温めつつもほんのり切なくさせて。

家族で過ごした日々を思い出しながら、しばらく辺りを散歩したのだった。