ざわざわと心が落ち着きをなくし、なぜか頭に浮かぶのは夢の中で私に向かって手を伸ばし、私の名前を呼んでいたナギの姿。
いっそ、次にナギにあったら夢を見たことを告げてみようかと思った時。
「あ!」
私はある重大なことに気づいた。
会えたことを喜ぶばかりですっかり頭から抜けていた。
ナギに連絡先を聞くのを。
今から戻って聞いて来ようと、振り返った私はさらに動揺する。
ナギから借りたマフラーが、いつの間にかなくなっていたのだ。
首から外れた感覚は全くなかったけど、ないということは落としてしまったのだろう。
もうこれは戻れと言われている気がして、私は急ぎ踵を返し、マフラーを探しながら桜の木の野原へと戻った。
──けれど。
どんなに目を凝らして探してもマフラーは見つからず。
戻る途中、すれ違っていないはずなのに、ナギの姿はどこにもなく。
私は首を傾げながら、仕方なく展望台の場所まで引き返したのだった。