「都会暮らしはどう?」
「うん……なんとか、やれてるかな」
それだけで、ナギは私が何を困難としているのかわかったようで。
「もしかして、まだ苦手なんだ? 人と接するの」
昔の私を思い出し懐かしんでいるのか、優しく眦を下げたナギ。
小さく頷いてみせると「そうか」と、私の頭をポンポンと幼い子をあやすように叩いた。
触れられて、キュ、と胸が恋心に締め付けられる。
ナギは変わらない。
昔もそうだった。
人見知りをする私に、大丈夫だよって笑いながら手を握ってくれていた。
変わらないナギに私は安心し、緊張がほぐれていく。
だから、久しぶりでも私は自分から話すことができた。
コミュニケーションは苦手だけど、中学に入ってからできた親友がいることや、今はその子と一緒に本屋さんでバイトをしていることを。
都会はとても便利だけど、人に溢れた街は、私には少し息苦しく感じることを。
苦笑いする私に、ナギは穏やかな声色で言う。
「もしかしたら、この島にいる間に少しは克服できるかもな」
ここの島民は、心根があったかい人が多いから。
彼の言葉に、私はそうであればいいなと願いつつ首を縦に振った。
直後、鼻がムズムズして。
「っくしゅん」
私は口元を押さえ、くしゃみをした。