「凛の役に立てたなら嬉しいよ」
ナギは言いながらはにかむと、気になることがあるのか視線を景色に走らせた。
私たちを囲む桜の木々をゆっくりと見て、考えるように瞳を揺らす。
「……ナギ?」
どうしたのかと彼に声をかけると、ナギは私を見て頬を緩めた。
「悪い、なんでもない。それで、凛はどうして島に?」
「あ、それは……」
答えかけて、私は口を閉じた。
あなたが夢に出てきて、気になって、会いたくなったから来た、なんて。
恥ずかしくて言いづらい。
でも、嘘をつきたくない私は、首を傾げるナギに言葉を続けた。
「連絡とれなくなってたし、会いたかったから冬休みを使って来たの」
「それは、俺に? それともヒロ?」
「ど、どっちも」
本当は、ナギに会いたい気持ちが大きかったけど、これも恥ずかしくて言えないので少し誤魔化してしまう。
するとナギは羽織っているグレーのチェスターコートのポケットに手を入れて「なんだ。俺だけじゃないのか」と残念そうに笑って肩をすくめた。