「ナギ……久しぶり」
「ああ。本当に、久しぶり」
嬉しそうに目を細める彼は桜を背にすると、すらりと伸びた足を動かして、まだどこか夢見心地でいる私の前に立った。
「よく私だってわかったね」
「そりゃあ、ずっと会いたかったからな」
からかう口ぶりだけど、その双眸が愛おしそうに微笑む。
男の人にあまり免疫のない私は狼狽えて、熱を持った頬を隠すように俯いた。
私も会いたかったと伝えるべきだろうかと迷っていると、ナギが「悪い」と謝罪を口にする。
何がと顔を上げると、彼は私の胸元にある勾玉を指差した。
「本当のこと言うと、確信したのはそれが見えたからなんだ」
そう言って、笑ったナギ。
どうやら本当にからかわれていたようで、真面目に答えないで良かったとこっそり安堵する。
「持っていてくれてたんだな」
「もちろんだよ。不安な時は、この勾玉とナギの言葉を思い出して、自分を励ましてきたんだよ」
離れていても繋がっていると言ってくれたナギの言葉があったから、心細くても、新しい環境になかなか馴染めなくても、私は頑張ってこれたのだ。