沈黙に居たたまれなくなって、視線を外そうとした時。

ある物に気づき、私の目は釘付けになる。

彼の首から下がっているペンダントに覚えがあったからだ。

というか、それは私もいつも身につけている物だった。

淡い碧色の勾玉と呼ばれるお守り。

咄嗟に自分の胸元を確認すると、私のペンダントはしっかりとある。

では、なぜ彼が、と考えた瞬間、もう一人の持ち主を思い出した。


「……ナギ?」


自然と唇がその名前を紡ぐと、彼の手がそっとこちらに伸ばされる。

相変わらず顔はハッキリと見えないけれど、ナギなのではと思ったら躊躇いなど霧散した。

私は、彼の手に己の手を重ねるべく一歩踏み出す。

歩く度に、花が足元でふわりふわりと舞い踊り、上品な甘い香りが鼻をくすぐって。

いよいよ白い指先が絡まろうとした刹那──。

目の前の彼は、その姿を無数の花びらに変えて。

空気に溶けるように、消えてしまった。

そして、目の前にある全ては、テレビの電源が落ちるように突然終わりを迎えた──。