太陽の光を浴びてキラキラとプリズムを放つ海をゆっくりと行き来する船。

港から伸びる道の先には観光客が多く訪れる市街地が見える。

風が吹けば島の木々が波打つように柔らかく揺れて。

私は、風で少し乱れた髪を押さえて青空を見上げた。


「……お父さん、私、元気だよ」


都会での生活では色々あるけど、こうしてひとり、お父さんとの思い出が残る島にも来れるくらいに成長もしたよ。

ここに来て、昨日、さっそくヒロに会えたの。

ナギにも会えるかな。

無事に会えるように、お父さんも祈っていてね。

心の中で話しかけて、コートの下の勾玉があるあたりに手を添えた直後。

そよ風に花の香りが乗って、私の花をくすぐって。


──ヒラリ。


小さな薄紅の花びらが、ひとひら。


「……桜?」


こんな時期にと珍しく思いながら、蝶が踊るように空を舞う花びらに向かって腕を伸ばし受け取る。

運良く手のひらに乗った花びらを見つめて、そういえばと、夢の中で狂い咲いていた花を思い出した。