私が生まれ育った、予渼ノ島。
自然溢れるこの島には、私の大切な思い出が詰まっていて、優しい人達が暮らしている。
大切な幼馴染のヒロと、同じく幼馴染で初恋の人でもあるナギ。
ナギに呼ばれなければ、きっと私は変われなかっただろう。
自分らしくいられる温かな居場所があると、気づくことはできなかった。
失ったと思っていた居場所にまた戻れる。
その喜びもまた、得られることはなかっただろう。
これからもきっと、人との距離感に悩むことはあると思う。
誰かの言葉や態度に傷つくことも、どんなに気をつけていても相手を傷つけることもあるかもしれない。
その時は、話し合い、理解し合う努力をすればいいのだと、大切な人たちから私は教わった。
ぶつかって。
「凛!」
許し合って。
「お母さん!」
再び、手を取り合う。
「おかえり、凛」
ねえ、ナギ。
「……っ、ただいま、お母さん」
私、やっと、帰ってこれたよ。
次はあなたの番。
私はあなたの目覚めを待ちわびているから。
どうか早く、帰ってきてね──。