ひとり、静かに涙を零しながら暗い林を抜けて。
女将さんの待つ車に乗り込むと、お願いするよりも早く「病院へ行こう」と言ってくれ、車を走らせた。
急ぎ向かったナギの眠る病室。
疲れ切った顔で振り返ったヒロから聞いた言葉は。
「峠は越えたって」だった。
その途端、涙腺は決壊。
私は子供みたいに泣きじゃくって。
ヒロも、大きく息を吐き出すと、弱々しい声で「マジで……焦った」と壁に背を預けながら冷たい床にしゃがみ込んだ。
そんな私たちの頭を、女将さんは優しく撫でてくれて。
「さあ、帰ろうか」
安心する声で促された私たちは、まだ少し後ろ髪を引かれる思いで病院を出たのだった。