だから。
「ナギ……生きて。一緒に、生きてください」
「凛……」
月の光を纏ったナギが一歩、私へと歩み寄る。
「本当に、お前は俺の欲しい言葉をくれるよな」
茶色い瞳を細めて、じわり、涙を滲ませて。
「俺……お前の隣で、生きたいな」
じいさんとばあさんになっても、ずっと。
願いを声に出し、ナギの綺麗な指が、私の冷えた指へと伸ばされる。
触れられず、すり抜けてしまうのをわかってはいたけれど、私も手を差し出して彼の温もりを求めた。
何の感触も得られない。
──はずだったのに。
指と指が触れて、温度を感じて。
私たちは、互いに目を見開いた。
ナギの指が、確かめるように私の指に絡まると。
ナギはまた一歩踏み出して、私の背に腕を回すと力いっぱい抱きしめた。
奇跡を逃すまいと縋るように。