「それは、私がっ、許さないから!」


熱いものが込み上げて、喉がつかえる。

声を荒げる私を、ナギが珍しいものを見るように僅かに目を丸くした。

涙が頬をポロポロと溢れ落ちるけれど、私はかまわずに続ける。


「大切な家族をみんな失って、悲しくて、辛いかもしれない。苦しんでるナギに、こんなことお願いするのは酷なのかもしれない」


私の傲慢さに、笑っても、呆れられたとしても。

それでもかまわないから。


「でも! 私も、ヒロも、いるよ」


こっそり学童を抜け出して、道路脇に降り積もる桜の花びらを雪のように降らせてはしゃいだ春。

セミの鳴き声を聞きながら、先生がおやつに用意してくれた棒のアイスを頬張った夏。

読書の季節だからと三人で難しい本を読むチャレンジをして、見事に川の字になって眠ってしまった秋。

大きな雪だるまを必死になって作ったら、三人して手に霜焼けまで作ってしまった冬。

二度とあの頃の私たちには戻れないけれど、生きていれば新しい思い出をこれからたくさん作っていける。

喧嘩したって、また仲直りして。

居場所だって、きっと。

ナギならたくさん作っていける。