着信が鳴り響いたのは、スーツケースに荷物を纏めていた時だ。
窓の外では未だ雪が降り続けている。
ディスプレイに表示された名前を見て、私は何かあったのではと、どうにも嫌な予感を胸にスマホを耳に当てた。
「ヒロ、どうしたの?」
『今、ナギと一緒か!?』
「え? い、一緒じゃないけど……」
慌てふためくヒロの声に、胸騒ぎは強くなっていく。
杞憂であって欲しい、予感なんて外れて欲しいと祈りながら、何かあったのかと口にする前に、ヒロが悲痛な声で言った。
『ナギが……危篤、状態になった』
一瞬つかえた声は、彼の動揺を伝えていて。
「ナ、ナギ……」
全身の血が冷えていくような感覚が私を襲った。
急いで病院にと、立ち上がってふと思い至る。
死の間際にいるというなら、もしかしたら。
「わ、私……御霊還りの社に行ってくる」
黄泉路を渡る前に引き止めなければと、スマホを耳に当てながらコートを掴んだ。