「私ね、ナギが目覚めるまで側にいたいと思ってた」

「……過去形?」


ナギの問いかけに、私は眉を下げて笑むとそっと頷いた。


「お母さんに相談して、また早めに戻ってくるつもりでいたの」


けれど。


「でも、ここにいれば私はナギを想って呼んでしまう。だから、私は早めに島を出る」


そして、ナギが目覚めるまで、戻ることはしない。

そばにいたいけれど。

目覚めるその時を、ナギの近くで待ちたいけれど。

その気持ちを抑えて、堪えて、ナギを見つめ続ける。

ヒロが瞳を伏せて。

ナギは真剣な表情で私を見つめ返していて。


「お母さんとの関係も、人との関りも頑張るよ。だから、ナギは早く起きて」


そして、生きていて。

死んだら終わってしまうから。

黄泉の国になんて行かないで。

そこに行ったら、もう会えなくてなってしまう。

独りよがりの想いを届けたつもりで、満足して。

ナギを求めて空を見上げるだけなんて、そんな苦しい時間は欲しくない。


「私は、ナギが生きている今が、明日が欲しいの」


かけがえのない毎日を。