「……十一月、十一日」
その数字が一瞬心に引っかかって、何かあっただろうかと頭を傾げたと同時、思い出した。
夢を見た日が、十一月の十一日だったのだ。
もしかして、もしかすると。
「……私は、やっぱり呼ばれたの?」
ナギに。
ずっと会いたいと思っていたと言ってくれていた、私も会いたいと思っていた、初恋の人に。
予想を口にして、勾玉を包んでいるナギの手を見つめ続けて。
どのくらいそうしていたのか。
立ち尽くしていた私の耳に、再び扉が開く音が聴こえて視線をそちらにやる。
現れたのは、バスに乗る前にナギの伝言とこれから病院に様子を見に行くことを伝えておいたヒロだった。
「……ナギは、戻ってるのか?」
「多分……。ヒロ、用事は大丈夫?」
「とりあえずはな。それより、ナギだろ。眠いって言って消えたのか?」
私の横に並んで立つヒロに、私はひとつだけ頷いて答える。
「……完全に弱ってるじゃねーか」
「どうしよう、ヒロ。ナギがこのまま……」
死んでしまったら。
その言葉は、声に出してしまったら本当になってしまう気がして言えなかった。
でも、ヒロには伝わったようで、彼は拳をギュッと握る。
「……そうなったら、俺のせいだ」
「……どういうこと?」
なぜ、ナギの事故にヒロが関係するのか。
眉を寄せ、後悔を滲ませた横顔に問いかけると、ヒロは少しの沈黙の後、教えてくれる。