「こんばんは。点滴を替えにきました」
「は、はい」
邪魔にならないようにと、勾玉を手に取ったまま一歩後ろに下がれば、看護師さんが私の手にある勾玉を見た。
「それ、神城さんのですよね?」
「は、はい。何持ってるんだろうって、気になって」
「その勾玉ね、事故で運ばれてきた時にしっかりと握ってたんですよ。それで、大切なものなんだろうからって、握らせてあげてるんです」
「そう、だったんですね……」
事故に遭ってもなお、その手に握っていた勾玉。
ナギにとっても、それほどに大切なお守りなんだ。
私はナギの手に勾玉を再び握らせる。
看護師さんは点滴を新しいものに取り替えると、何かあれば声をかけてくださいねと言い残して部屋から出た。
また、室内が静かになって。
瞼を閉じ続けるナギの顔を見つめる。
ふと、ヘッドボードのネームプレートが目に入って、私はそれになんとなく読んだ。
【神城渚様】
【主治医 藤田Dr.】
【血液型 B型】
【入院日 十一月十一日】