「お願い」
ナギを背に庇うように二人の間に立って、無理矢理にもピリピリとした空気を追い払おうとする。
ヒロは止めに入った私を見つめ、仕方なさそうなにため息を吐いた。
「とにかくさっさと体に戻って起きろ。話の続きはそれからだ」
「じゃあ戻らない」
「っ……ナギ、お前いい加減にしろよ!」
今度は私を間に挟むように言い合いになって。
けれど、ヒロがふいにジーンズの後ろポケットからスマホを取り出してそれは中断された。
どうやらメッセージが送られてきたらしく、ヒロは軽く舌打ちをすると「家に戻る」と苛立ちながらまたスマホをポケットにしまう。
「ナギ、とにかく戻れよ。いいな」
念を押すようにナギを指差して、踵を返したヒロにナギは返事をしなかった。
私はゆっくりとナギを振り返る。
すると彼は、私へと手を伸ばしてきて。
「……ああ、やっぱりダメか」
頬に触れようとした手が通り抜けるのを確認する。
そして、ヒロがいたから触れないのかと思ったんだけどと寂しそうに零した。