ヒロは驚きつつも、悲しそうに眉を下げて私を見ている。


「ヒロ……声、聞こえるの?」

「声だけは。どこにいる?」

「ここ。私の隣に立ってる」


教えると、ヒロはナギを探すようにその場所をじっと見つめた。


「……ヒロか。久しぶり、になるのか?」

「お前、こんなとこで何してんだよ……」


気のせいか、ヒロの声が少し震えてる気がして心配していると、それに気づいているのかいないのか。

ナギは、にっこりと笑った。


「何って、プロポーズ」

「ふざけてる場合じゃねえだろ。自分の状況わかってんのかよ!」


初めて、ヒロが声を荒げる姿を見て、私は思わず肩を跳ねさせてしまう。

ナギは慣れているのか、そんなヒロの姿を冷静な瞳で見ていた。


「……わかってるよ。ちゃんと、思い出したから」


思い出した、ということは。

自分が事故に遭ったことを、認識しているということなのか。

ヒロはそう解釈したのか「わかってるならさっさと戻って起きろ」と少し苛立った声で促した。

だけど、ナギは相変わらず余裕の態度を崩さない。