「……ナギ」


病院で見た、憔悴した顔なんて嘘みたいに。

ナギはニコニコして私を見つめている。


「哀しそうな顔してるな。何かあったのか?」


彼は、自分の状態を気付いているのか。

知っているのか。

知らなければ話すべきなのか。

何をどうすべきかわからないまま、ナギの問い掛けに応えられずにいると、彼は私の隣に並んで冬桜を見上げる。


「恵美姉ちゃんは、今日は一緒じゃないのか?」


ナギは、年が明けたのも知らないのだろうと思うと胸が苦しくなった。


「……うん」

「恵美姉ちゃん、結婚するんだったか?」

「うん。今月、フィアンセさんが引っ越してくるって」

「そっか。結婚か……。俺もいつかするのかな」


呟いたナギの横顔は、少し寂しそうで。

ナギは風に柔らかく揺れる桜に視線をやったまま、薄い唇を再び開くと。


「結婚するなら、相手は凛がいいな」


口元にほんのりと笑みを浮かべて。

だけど、その言葉は私にはとても強烈なもので。