──どのくらい、泣いたのか。
泣き止んだ頃には瞼が腫れてしまって、女将さんは着付けを中断するとタオルに包んだ保冷剤を渡してくれた。
瞼が気になるなら、無理に初詣に行かなくてもいいと女将さんは気を使って言ってくれたけど、八雲君が望んでくれているし、思い切り泣いたおかげか胸の内が少しスッキリしていたので、ギリギリまで瞼を冷やして行くことを伝えた。
出発時、着物を着た私を八雲君は『お姫様みたい』と褒めてくれて。
でも、顔がいつもと違うと続けて言われて私は『寝不足だからかな』と誤魔化して笑った。
まあ、寝不足も嘘じゃないんだけど。
それから、私達は旦那さんの運転で島で一番大きくて歴史のあるという予渼神社に詣でた。
鳥居の前で一礼し、広い境内に足を踏み入れると、参道にはたくさんの参拝客が訪れていて、穢れを洗い流す場である手水舎も順番待ちをしたほどだ。
ちなみに、玉響物語を調べる過程で知ったことだけれど、手水舎で左手、右手、口の順できよめていくのには理由があり、神道では左手が神聖だとされているかららしい。
玉響物語で巫女に神託を授けたアマテラスオオミカミが、父であるイザナギノミコト(伊邪那岐命)が左目を洗った際に生まれたことから左手が神聖なものとされているそうだ。