「お太鼓結びにしようかね」と、私の背後で帯を結び始めると、ふと、その声色を和らげて。

「まあ、オシャレは我慢もありだけどさ。何かあって困って、悩んで、辛いなら、それは我慢ばかりしちゃあよくないよ。泣きたい時は、素直に泣くのが一番」


……それはきっと、私を心配してくれての言葉。


「辛い時でも笑顔でいればいいことがある、気持ちが前を向くなんてよく聞くけど、私はあれ、嘘だと思うんだ」


そうなの、かな。

おばあちゃんが死んで、家が火事にあって、いいことなくて暗い顔をしていたら『あの子、なんか不幸うつしてきそうじゃない?』って言われた。

お母さんも、私が何かあって肩を落としていると『いつまでも辛気臭い顔しない。そんな顔してると、不幸が寄って来るよ』と言っていた。

だから、辛くても笑っていれば人を不快にさせないのだと思ったし、いつも笑顔でいる友人たちはキラキラして見えるから、私も出来る限りそうあるべきだと心がけていた。

どんな時でも笑顔でいれば幸せになれる。

だけど、そうしなくても良かったの?