「凛ちゃんは着物、着たことある?」
「た、多分七五三の時くらいに」
祖母は着物をいくつか持っていたみたいだったけど、それを借りて着た経験もないし、着物も家事で燃えてしまったので残っていない。
それと、七五三に関しては着たような記憶がある、くらいで微妙なところだ。
記念に撮った写真も、残念ながら家事で焼失してしまっているし。
「そうなのね。じゃあ、私が着付けてあげるよ!」
「で、でも」
着物って高級なイメージがあるし、万が一汚してしまったら悪いので断ろうとしたけれど。
「綺麗な格好してお願いされたら、きっと神様も協力してくれるさ」
女将さんのその一言に、困った時だけ神様に頼るなんて図々し気もするけど、藁にもすがりたい思いでいる私は。
「よろしくお願いします」
ナギが目を覚ますことができるようお願いに行く為、お言葉に甘えさせてもらうことにした。