何があったのかと聞こうとしたら、お店の中から配達に行ってくれと頼むヒロのお父さんの声が聞こえてきて、それはできなくなった。
とにかく、ナギが現れたり何かあったらすぐ連絡しろと、ヒロの連絡先だけ教えてもらい、お店に入っていくヒロを見送ってから、自転車に跨った。
それから……私は、昼食を食べる気にはなれず、自動販売機で温かいゆずの飲み物を買って、ゆっくりと喉に流し込んで。
ナギに会うことはナギの命を危険に追い込むと知った今、御霊還りの社に行くことも出来ず。
かといって、みなか屋に帰る気分にもなれなかった私は、結局、展望台のベンチに腰掛けて、心模様とは正反対のうららかな空を眺め続けていた。