夕食は年越しそばがメインになるけど大丈夫かと女将さんに聞かれたのは、日暮れ前にみなか屋に戻った時だ。

一度は気持ちが前を向いたはずなのに、突きつけられた新たな事実に、私の胃はまた拒否反応を起こしていた。

昼前、ヒロの家から帰る時、すでに不調は顔に出ていたようで。


『凛、大丈夫か?』


自転車の鍵を握りしめた私の顔を、見送ろうとしてくれたヒロが心配そうに覗き込んでいたのを思い出す。

大丈夫かと言われたら、全然大丈夫ではないけれど。

一番大変で大丈夫じゃないのはナギで。

だから、弱音なんて吐いたらいけない気がした私は頷いて見せた。

でも、うっかり眉を寄せて微笑んでしまったものだから、それを見たヒロまで眉間にシワを作って。


『無理、すんなよ』


くしゃりと頭を撫でられた。

優しくされて、涙が出そうになる。

それを誤魔化すように、笑みを作って「ヒロも」とナギのお見舞いに行き続けているという彼に伝えた時。


『俺はどちらかというと、無理をするナギを止める役だ。今までも……あの時も』

『あの時って?』

『ナギが、事故にあった時だ』


ヒロが、少し苦しそうな顔で吐き出した言葉。