両親と訪ねたこともなく、写真で見たこともないので頭を振ると、お姉さんは少しの沈黙の後に唇を開いた。


「渚君が呼んでいたのかしら。他に何か変わったことや気づいたことは?」

「あとは……鈴の音に似た、綺麗な音がたまに聞こえます」


語りながら、美しく響くあの心地の良い音を思い出していれば。


「もしかして、たまゆらかしら」


お姉さんは私の手に乗ったままの勾玉を見つめつつ言った。

ヒロが腕を組んで首を傾げる。


「たまゆら? 玉響物語の?」

「たまゆらという言葉には色々な意味があって、勾玉自体のことをたまゆらとも言うのよ。それと、玉が触れ合う音のことを指したり、写真に写る淡い光球のこともたまゆらと呼ぶらしいわ。鈴の音に似たその音は、もしかしたら勾玉が触れ合い、渚君があなたを呼んでいる音なのかも」


勾玉が、触れる音。

私はナギに呼ばれて、予渼ノ島に来たの?

ナギはどうして私を呼ぶの?

あんな状態で……と、そこまで考えて、嫌な答えを想像してしまった私は身を震わせた。