それにしても。


「お姉さん、とても詳しいんですね」


もしかして、こういうのって常識で、大人はみんな知っているものなのかなと考えた直後、温くなってきた紅茶を一口飲んでからヒロが口を開く。


「姉貴は高校の頃から五年くらい比良坂神社の巫女をしていたからな」

「巫女さん! そうなんですね!」

「そうなの。昔は神降ろしや儀式に勾玉を使ってたらしいの。でも、今はそんなのやらないから、蔵に保管されてるとは渚君のお爺様から聞いていたけど、まさか持ち出されていたなんて」


再びため息を吐き出したお姉さんに、私も苦笑いして。


「あの、そんなに大切なものならすぐにでも返さないとダメですよね」


本当は、ナギからもらったものだし、ずっとお守りにしてきた私にとっては宝物のようなものだから手放しがたいけど、さすがに持ち出し禁止レベルのものを持ち続けるのは気が引ける。

ナギの物と一緒に蔵に保管し直すべきではと、そう考えたのだけど。


「そうね。でも、今現在、比良坂神社は渚君が管理者だから、それは渚君の判断で決めていいと思うわ」


比良坂神社の、管理者。

そうか。

お祖父さんもお祖母さんも他界してしまったから、今はナギが受け継いでいるんだ。

そして、なぜナギが比良坂神社に現れるのかも理解できた。

ナギの家であり、勾玉も関連があるからなのだろう。