「ナギは幽霊……」


確かめるように、自分の心に落とし込むように声にする。

幽霊。

死を連想させる響きに、ナギの今の状態を思うと胸が締め付けられる。

けれどそれなら、神出鬼没なのも、いつのまにかマフラーがナギの元にあったのも納得できてしまう。

そして、電話がつながらないのも、メッセージの返信がないのも、彼がそれをできる状況にいないからだ。

幽霊だというなら、全部、繋がる。

ただ、不思議に思うことがひとつ。

私は、ヒロのお姉さんに聞いてみる。


「あの、幽霊って、触れるものなんですか?」


私の想像上では、透けていたり触れられなかったりするのが幽霊だ。

でも、ナギは触れた。

マフラーを借りた時だってマフラーの感触はしっかりとあったし。


「波長が合っていれば、触れるのも可能でしょうね。ほら、今何かに触られた! ってあるでしょ?」

「言われてみれば、心霊番組でもロケとかでやってますね」

「そんな感じよ。……ヒロ、あんた今の怖かったんでしょ」


どうやらヒロは、お姉さんの例えでビックリしたのか、手にしたティーカップから紅茶を零してしまったらしい。

「黙れ」とお姉さんを鋭い声で威嚇しながら、小花柄の布巾でテーブルを拭いている。