「マジか……」
ショックを受けたのか、ヒロは右手で口元を押さえた。
心なしか顔色が悪いように見えて、ハタと気づく。
「ヒロ、オバケ苦手なの?」
私の質問にヒロの眉がピクリと動いて、次いでジロリと睨んできた。
「お前は得意なのかよ」
「み、見たことないからわからないけど、心霊番組は大好きだよ」
ホラー映画も好きだしと続けると、ヒロの顔つきが訝しげに変わる。
「お前……人間にはビクビクするのに、どうなってんだ」
「アハハ……確かに」
言われてみれば、なんでだろう。
でも、個人的にはそこにいるのかいないのかわからない幽霊よりも、確実に存在し、悪意を隠して笑顔を作る人間の方が怖い。
もちろん、そんな人は少ないのはわかっているけれど、陰で仲良しの子の悪口を言ったりするのを聞くことは珍しくないのだ。
「まあ、そんな理由があって、昨日は渚君に会った時ビックリしたのよ。彼、まだ生きてるのに、なんでって。しかも凛ちゃんが会話していたから、一瞬ね、もしかしたら意識が戻って病院を抜け出したのかと思ったくらいよ」
でも、その割には身なりも整っていて、顔色も悪くないから、これは魂だけウロウロしているのだろうと、ヒロのお姉さんは予想したんだと話してくれた。