消毒液の匂いに包まれた病院内。

先導するヒロは、慣れた足取りでロビーを抜け、エレベーターに乗ると三階で降りた。

廊下の壁には、各病棟へ案内する色のついた矢印が描かれているけれど、ヒロはそれに目もくれず、締め切られた透明な扉の前に立った。

壁にはインターホンが備え付けられていて、その真横に【お見舞いの方はこちらから看護士にお声がけください】と書かれたプレートが貼ってある。

ヒロが呼び鈴を押すと、すぐにスピーカーから若い女性の声が聞こえてきた。


「はい、ナースステーションです」

「三〇九の神城の面会にきました安達です」

「安達さんですね。どうぞ」


スピーカーの音が途絶えた直後、ドアのロックが解除されたらしく、ジーという機械音が聞こえてヒロはレバー型のドアノブを下方に押して開ける。

そして、そのままナースステーションで面会受付をしていると、四十代くらいの看護士の女性がやってきた。