あだち酒販に到着したのは約束の時間より五分ほど早かった。
お店は十時オープンだから裏手の玄関のチャイムを鳴らすべきかと迷っていると、タイミングよくシャッターが上がって。
しかも押し上げてるのがヒロだったものだから、私は決意した勢いもあり、どこかから聞こえる可愛らし鳥のさえずりを背にしていつもより声を張る。
「おはよう! ヒロ!」
「……元気だな、凛」
私の性格からして珍しく見えるのか、訝しげな顔でおはようと挨拶を返してくれたヒロ。
「姉貴、まだ支度してるっぽいけど呼んでくるか?」
「あっ、その前にヒロに相談があるんだけど、今少しいいかな?」
「相談? ……また、お袋さんとうまくいかなかったのか?」
問われて、私は首を振った。
「それは、前進も後退もしてなくて、これから頑張るところなんだけど……その、別件で心配ごとがあって」
「なんだ? ああ、少し待ってくれ」
ヒロは店内で準備をしていたご両親に一言告げてから、また出てきて「それで?」と、話を促した。