子猫のことは、この先どうなるのか心配だった。

けれど、大人がついているなら大丈夫そうだ。

ひとつ、胸の片隅にあった不安が解消されて、心が少し軽くなる。

私も、こうして誰かの支えがあって生きてきたんだよね。

父だったり、母だったり、祖母であったり、ナギやヒロであったり。

朋美だってそうだ。

毎日を必死に生きていると、そんなことも見えなくて、うっかり見失って。

人は、ひとりでは生きられない。

ひとりでは、ないのだ。

誰かの手を借りて、誰かに手を差し伸べて。

そうやって生きている。

人は繋がっている。

開いたコートの合わせから覗く勾玉を無意識にぎゅっと握りしめ、瞼を閉じる。

母とも和解できてない。

ナギに関してもわからないことだらけ。

だけど、わからないからとウジウジしていたら、進めない。

進めないと、変われない。

なら、進まないと。

大きく息を吸って、吐き出して。


「……よし!」


両手で頬をパチンと叩いた。

動こう。

大切な人が苦しんでるのかもしれないから。

ヒロを困らせてしまうかもしれないけど、ぶつからせてもらおう。

決意して、私は子猫に別れを告げるとみなか屋へと足を向けたのだった。