「まあ……八雲は小学生だしまだ隠し事も下手だ。それと、私も子供だったから想像がつく」


そう言われると、確かに小さな頃は上手に隠したつもりでも、いつのまにか親にバレていたことがあった。

子猫に関しても、私が気づいたくらいだし、ご両親からしたら気づくのは当然なのかもしれない。

ただ、子が成長すると今度は子が親の隠し事に気づくようにもなる。

三年前、母の雰囲気がどことなく変わり、父以外の男性の影に気づいたように。


「凛さん、八雲のことも、子猫のことも、うちの手伝いもありがとう」


一瞬、暗い思考の海を漂いかけた私に感謝の声が降ってきて。

私は急いで立ち上がると、旦那さんに頭を下げた。


「い、いえっ、お世話になってますし、お役に立てるのは嬉しいですし……こちらこそ、色々とありがとうございます」


言い切ってから頭を上げると、旦那さんは落ち着いた柔らかい表情でゆるゆると頭を振る。


「子猫のことは、心配しないでいいよ。八雲のフォローは私がやるから。実は、いい魚もあげてるんだ」


これは妻には内緒だよなんて、目を細めた旦那さんは、それじゃと告げて踵を返した。

ガサガサと草をかき分け、みなか屋へと戻っていく姿を見送りながら、ご夫婦揃って素敵だなとほっこりした気分になる。