確かに、それがあれば少しは寒さをしのげるかもしれない。
納得したところで、もうひとつの可能性に気づく。
「もしかして、このセーターも旦那さんのですか?」
「ああ、風邪をひいては可哀想だから古くなったものを置いたんだ。使ってくれて何よりだ」
やっぱりそうだった。
八雲君が勝手に持ってきてたら大変だと思ったけれど、良かった。
ホッと息を吐くと、旦那さんはダンボールを子猫の横にそっと置く。
「八雲も可愛がっているようだが、今後どうしてやるのがいいか悩むな」
「知ってらしたんですね」
「……実のところ、妻も知っているんだ」
「そ、そうなんですか?」
まさか、すでに女将さんにバレていたとは。
驚きつつも、子猫に用意してきたご飯の入った袋を広げて置いてあげると、子猫はセーターの中から出てきてご飯の匂いを嗅ぎ確かめる。
そんな子猫の姿を微笑ましそうに眼差しを和らげて、旦那さんは言った。
「親だから、子供ことはなんとなくわかるものだよ」と。
「よく見てるんですね」
八雲君だけじゃない。
きっと、たつ君のことだってそうなんだろう。