あの夢を見たのはあれきりで、ハッキリと音を覚えているわけではないけれど。
それでも、ハッと思い出したくらいには似ていた。
一度聞いたらしばらくは耳に残る、優しく美しい鈴の音に。
そして、どうしてだろう。
この鈴の音を聞いた瞬間から、ナギのことが頭を離れない。
もちろん、ここにはナギに会いに来ているのだから当然なんだけど、そうじゃなくて。
あの夢を見た直後と同じ、気になって気になって仕方がないのだ。
早く会いたいと、走り出したくなる焦燥に駆られる。
今までこんなことはなかったのに。
どうして急に?
あの夢には、何か意味があるの?
……なんて、今考えていても答えは出ないだろう。
でも、ナギに会えれば、もしかしたらそれが判明するのかもしれない。
とにかく、ナギに会おう。
私は決心を新たに、民宿の引き戸に手を掛けた。