ナギがいたの、全然気づかなかった!

思考に囚われすぎたのか、なんにせよ考え事しながら自転車を運転するのは危ないなと気を引き締めつつバックする。


「お前、驚きすぎだろ」

「いるのわからなくて」


小さく笑うナギに苦笑すると、彼はコートのポケットに手を入れた。


「ぼけっと走ってたら壁と正面衝突するぞ。凛は鈍臭いとこあるしな」

「そ、そこまで鈍臭くないよ」


からかうように言われて、否定しながら自転車から下りる。


「それ、ヒロの自転車?」

「あ、そうなの。移動するのに不便だからって貸してくれて」

「ふーん……ヒロにも会ってんのか」


どこか不機嫌そうな表情で自転車を見るナギ。

もしかしたら、喧嘩しているせいだろうか。


「会ってるて言っても、お互いの用事のついでとかだけど。ナギは? ヒロと……会ってる?」


喧嘩して、会ってないのはわかってる。

ただ、いつも助けてくれる二人に何か手助けできないかと、とりあえずきっかけを探したかったのだけど。


「ヒロとは……」


そう零したきり黙ってしまったので、やっぱりこの話題はまだまずかったかなと慌てて話を変えた。