荷物を運び終えて、あだち酒販に戻った頃にはとっくに温かなオレンジ色の夕陽は落ち、夜の帳が下りていた。
「本当に助かったわ。それじゃあ明日もよろしくね」
「はい!」
今日、作業を終えて帰る途中、明日も午前中から荷物を運ぶのだとヒロのお姉さんから聞いて、予定のない私は引き続きお手伝いしますと申し出た。
おせっかいかなと思ったけれど、少しでも自分を変えたくて、ドキドキしながら伝えた私に、お姉さんは満面の笑みを浮かべて喜んでくれた。
明日午前十時に店を訪れる約束になっている。
ヒロに挨拶して帰ろうかと思ったけど、配達に出ているらしい。
わざわざお店の外にまで出て見送ってくれたヒロのお母さんとお姉さんに会釈して、私は自転車に跨りペダルを漕いだ。
煌々と輝く月の光を浴びながら、すっかり暗くなった夜道を走る。
冷えた夜の空気を肺に取り込むと、ふるりと体が寒さに震えた。
マフラー、持ってくれば良かったな。
後悔すると同時に、ナギがマフラーを貸してくれたのを思い出す。
そして……。
『渚君と、あまり会ってはダメよ』
ヒロのお姉さんに言われた、言葉も。