「風邪かな? 大丈夫?」
「ああ、へーきへーき」
きっと、気のせいだ──。
続いた声は強い風が吹いたならかき消されそうなほど小さくて、どこか、不安になるような寂しげな声色で。
「ナギ──」
「凛ちゃん!」
本当に大丈夫なのかと心配になり、尋ねようとした声に、ヒロのお姉さんの声が被さった。
「あっ、お姉さん……」
「もう、いきなり出て行くから驚、い、た……」
段々と尻すぼんでいくお姉さんの声。
その目は驚愕し、零れ落ちそうなくらいに開いている。
お姉さんが大きな瞳で凝視しているのはナギ。
「……渚、君?」
久しぶりに会うのか、確かめるように呼んだお姉さんにナギは軽く手を挙げた。
「恵美姉ちゃん……」
「あなた……なんでこんなところに……」
そこまで口にして、ヒロのお姉さんは見る見る眉を曇らせる。
対してナギは、不思議がるわけでもなく、また右手のひらを見つめただけ。