停まっていたのは白い軽ワゴン車。

ゆとりのある車内の後部座席は倒されて、ダンボールや小さめの家具が積まれている。


「これが私の愛車。意外と荷物が入るのよ」


さあ、乗ってと促されて、ヒロのお姉さんが運転席に乗るのを見てから私も助手席に乗車した。

もう何年も車になんて乗っていないから少し緊張する。

まして、助手席に乗るのは初めての経験だ。

父が生きていた頃は、父の運転する車に乗ってよく買い物に出かけていたけれど、助手席には母が座っていて私はいつも後部座席だった。

母も車の免許はあるけれど、島にいた時は原付バイクだったし、島を出てからは特に必要ないからと車は持っていない。

だから正直、シートベルトも久しぶり過ぎてうまくつけれるか心配なくらいだ。

これを伸ばして、ここに差し込むんだよね?

間違えて抜けなくなったらどうしよう、なんて考えて恐々と差し込むとカチャンとハマった音がした。

感触から多分正解だと感じながら息を吐き出すと、運転席のヒロのお姉さんが私を見てくすくすと笑っているのに気づく。

もしかして、何か間違えていたのかと急いでシートベルトを確認したところで、お姉さんが「違うの。大丈夫」と私の肩に手を置いた。