「えっ、いえでも」
さすがにそれは図々しいと遠慮させてもらうつもりだったけれど、お姉さんは「遠慮は無用よ」と微笑んだ。
「実は昨日唐揚げを作り過ぎて。良かったら凛ちゃんも協力してもらえると嬉しいんだけど」
「お願いよ」とまで言われては断れず、結局私は「じゃあ、お言葉に甘えて」と頭を下げた。
「ありがとう! 私はまだお店にいるけど、大斗が部屋にいるから二人で食べててね」
お姉さんは若干まくし立て気味に喋ると、割れないように梱包した酒瓶の入ったビニール袋を私に手渡してから、自宅スペースの入り口に立つ。
「大斗ー! お昼ご飯、凛ちゃんと食べてくれるー?」
「……は?」
遠くから意味がわからないとばかりのヒロの声が聞こえて、そのあとすぐに階段を下る足音が聞こえてきた。
そして、目隠ししている暖簾をかきわけ、ひょっこりとヒロが顔を出す。
「マジで凛か」
「こ、こんにちは。ご相伴にあずかることになりました」
苦笑し頭を下げる私の隣でお姉さんが「そういうことだから、おもてなししてあげてね」とヒロに頼んでから、入店してきたお客さんの元へと踵を返した。