「大丈夫。俺がついてる」
励ますように頭を撫でられて、気持ちが僅かに浮上する。
いつまでも鬱々としていては前に進めない。
昨日はうまくいかなかったけど、まだ反対されたわけじゃないのだ。
まずは謝ってから、もう一度、相談してみよう。
私の世界を変えるなら、私が動かなければ。
決心し、膝の上にあった手をキュッと握る。
そうして、気づかないうちに落としていた視線をあげて。
「ナギ……ありが、と……う?」
感謝の気持ちを伝えようとしたけれど。
「……え? ナギ?」
いつの間にか、ナギの姿はもうどこにもなくて。
「ナギ?」
呼んでみても、どこかに隠れているような気配もない。
現れ方も去り方も、いつも突然で。
私は、迷子になったたつ君を駐在所に送り届け時と同様、狐につままれたような思いで、辺りを見渡していた。