「それで、昨日……島に戻りたい、できれば転校したいって話したら喧嘩になっちゃって」

「転校か。俺は大歓迎だけど、凛は本気でこっちで暮らしたいのか?」

「できれば、そうしたいなって思ってる」


正直な気持ちを伝えると、ナギは私を真っ直ぐに見つめながら問いかけてくる。


「やりたいことは? 島ではできないことも都会ではできたりするだろ?」

「今は特にないかな……。バイトも、本が好きだからやってるけど、今後もずっと本屋さんで働きたいわけではないし……」


だからこそ、目指すべき夢がある八雲君が眩しく見えるし、家を継ぐと決めたヒロを尊敬しているのだ。


「ナギは進路決まったの? 確かおうちは神社だよね」

「覚えてたんだ」

「おじいちゃんとおばあちゃんは元気?」


それは、なんの意図もなく口にした話題。

だけど、ナギは切なそうに眉を寄せて微笑むと……。


「二人とも今は天国で元気にしてると思うよ」


彼が、家族を亡くしてしまったことを告げた。