時折、船の甲板から壮大な景色を眺めつつ海風に吹かれ、波間を進むこと約二時間半。
「本船は、まもなく予渼ノ島、予渼ノ港に着岸致します。長らくのご乗船、お疲れ様でした」
船内に到着のアナウンスが流れると、しばらくして船は島の港の桟橋に接岸した。
キンと冷えた真冬の空気に迎えられ、下船した私の目に飛び込んできたのは、観光案内所の側に立つ大きなクリスマスツリーだ。
船内のレストルームにもツリーが設置されていたけれど、明後日はクリスマスイブ。
予渼ノ島は近年、樹齢が千年以上ある大杉やマイナスイオンに包まれた荘厳な滝といったパワースポットがたくさんあるとのことで観光客が増えているらしく、季節によるイベントも盛大に開催している様子だ。
でも、確か予渼ノ島には死者が住むという黄泉の国への入り口があるとかなんとか言われているので、和の雰囲気たっぷりの神話が残る島でキリストが関連しているクリスマスで盛り上がるとうのも少しアンバランスな気がする。
なんて、密かに考えつつも、やはり楽しげな雰囲気に彩られた景色は素敵だなと感動しながら、まずは宿へ向かう為にバス乗り場へと移動した。