視界が開けると桜景色が広がり、私はゆっくりと草を踏みしめ歩みを進めた。

アメノヨモツトジノカミと巫女の翡翠が共に黄泉の国へと旅立ったとされるこの場所に立つと、自然と二人の結末を思い出し切ない気持ちになる。

厳密に言うと、黄泉の国の入り口はこの島にはいくつかあり、それぞれにアメノヨモツトジノカミの社が存在している。

そして、普段参拝者が多く訪れるのは大きな洞窟のある神社の方で、写真で見た限りでは、奥深くまで続く穴はまさに黄泉の国の入り口といった佇まいだった。

洞窟の奥、何も見えない暗闇からは水の滴る音が聞こえ、それがまた死者がはい出てくるような雰囲気を醸し出しているらしく、入ったら二度と出て来れないとも言われているとか。

それに加え、そちらにも桜の木々が植えられているので、その神社と洞窟こそが二人の最後の地だろうという説が有力だと、サイトには載っていた。

けれど、この景色を見ていると、御霊還りの社なのだろうと思わされる。

何と言えばいいのかはわからないけど、どことなく清浄な空気が漂っている気がするのだ。