八雲君の部屋は、絵本作家になりたいという彼の夢が詰まったカラフルな部屋だ。

壁には彼が描いた絵がたくさん飾られていて、本棚には様々な種類の本がズラリと並んでいる。

絵本だけでなく、図鑑や辞典、漫画に小説。

どれも堅苦しい専門的なものではなく子供向けではあるけれど、彼が読書家なのがすぐにわかる。

私はつい今しがた、朝食前に玉響物語をわかりやすくまとめたノートを八雲君に見せたところだ。

八雲君は喜んでくれて、さっそくどこで区切るかを考えている。

ちなみに、今日の朝食は、女将さんにも心配をかけないように頑張って残さず食べた。


「凛お姉さん、勾玉ってどんなの?」


……今、名前呼んでくれたよね?

凄く自然だったから気づくのが遅れたけど、わぁ……これは嬉しいな。

私は自然と頬を緩め「これのことだよ」と、首から下がる勾玉を手に持って見せる。


「玉響物語に出てくるものと同じなの?」

「これは仲良しの友達からもらったものだからちょっと違うけど、でも繋ぐ力があるんだって聞いたかな」


そういえば、玉響物語の作中では二人の魂を繋いでいた。

巫女さんが神降ろしの際に勾玉を使用するようだし、勾玉には『繋ぐ』力があるのかもしれない。