日に日に衰えゆく身体と、衰弱してゆく巫女の様子に、アメノヨモツトジノカミは悟ります。

巫女の命を繋ぐ為の自分の命が尽きるのだと。

アメノヨモツトジノカミにはもうどうすることも叶わず、やがて黄泉乃島が雪に覆われたある日のこと。

一柱と一人は社の前に立ちました。

真っ白な雪と満開の桜を眺め、アメノヨモツトジノカミは呟きます。


「ああ、美しいな」


しんと静まり返った景色の中にアメノヨモツトジノカミの声が溶けて。


「ええ、とても」


もう一つ。

何年も失われていた巫女の優しい声が答え、アメノヨモツトジノカミは目を見張りました。

そして、巫女の顔に慈愛溢れる笑みが浮かんでいるのを見て、頬を涙で濡らします。

その涙が零れ落ちると、一柱と一人は共に黄泉路を逝き、魂となって永遠に結ばれたのでした。