アメノヨモツトジノカミは、巫女の首から下がる勾玉をその手に握らせると、自らの手でそっと包み込みました。

そうして、勾玉を媒体とし、互いの命を固く結んたのです。

おかげで巫女は一命を取り留めましたが、魂を無理に引き止めた為か、巫女は、泣くことも、笑うことも、話すこともできない人形のようになってしまいました。

アメノヨモツトジノカミは自らの勝手さを嘆きます。

涙を流し巫女を腕に抱きしめると、驚くことに巫女は抱きしめ返してきたのです。

表情も変えれず、声も出せず。

けれど、心は確かにそこにあることに気づいたアメノヨモツトジノカミは、巫女を喜ばせる為に巫女の好きなものをたくさん与えました。

ある時、巫女が飽きずに桜を見つめていたので「翡翠は桜が好きか」と尋ねました。

すると、巫女はゆっくりと頷いたので、アメノヨモツトジノカミは嬉しくなり社の周りに桜の木を次々と植えました。

そして、何年もかけて植え続けた桜の木々が社の周りを全て覆う頃、アメノヨモツトジノカミに異変が起きました。

体が重く、眠る時間が長くなったのです。

それは、巫女も同じでした。