「寂しいの?」

「いえ……あの、ごめんなさい。変なこと言って」


慌てて笑みを作り取り繕うも、女将さんはそっと首を横に振った。


「なにも変じゃないよ」


それはとても穏やかな、包み込むような声で自然と力が抜けて気が緩む。

ナギやヒロといる時とは違う安堵感。

これが母性というものだろうか。


「寂しいのも息苦しいのも辛いねぇ」

「……そうですね」


人付き合いも、あの受け入れているようでどこか突き放しているような雰囲気も。

誰もいない家に「ただいま」というのも。

母が私に興味を示さないのも。

苦しくて、寂しい。

けれど、ナギも言っていた通り、この島は皆が温かい感じがする。

もちろん、全ての島民がそうではないだろうけど、 都会にいるよりは数倍私には合っていると思う。


「卒業したら戻ってこようかな」


叶うなら、できるだけ早い時期に島に戻りたい。

女将さんにそう零すと。


「そんなに都会が合わないなら、いっそこっちに転校してきたら?」

「転校、ですか?」

「そう。住む場所なら卒業までうちに居候でもかまわないし」


それで手伝いなんてしてもらえると助かるよと明るく笑った女将さん。