「ごめんなさい、図書館だけにすれば良かったですね」
「いやいや、いいんだよ。帰ってきた時のあの子の顔、機嫌良かったし楽しかったんだろうね」
フフッと笑みを零し、女将さんはあんこで汚れたたつ君の口をティッシュで拭いた。
「ところでどうだい? 久しぶりの故郷は楽しめてる?」
「はい、とても。帰りたくないくらい」
ナギがいて、ヒロがいて。
のんびりとした島の空気も心地よくて。
こんな風にテーブルを囲む温かい雰囲気だって、都会に戻ったら味わえないだろう。
何より、この島に来てから気持ちが上向いていくのを感じている。
「そんなに? 都会の方が便利だろう?」
「便利だけど、都会での生活は少し、息苦しくて……寂しいです」
そう零してから私はハッとする。
せめて笑って言えたら良かった。
でも、今の言い方は重さを持っていただろう。
それを証拠に、女将さんが心配そうに私を見つめている。